所得税~個人にかかる税金 改正税法

【改正】令和2年以降の年末調整〜所得金額調整控除~

所得調整控除の創設の背景

 平成30年の税制改正により、給与所得控除や基礎控除の見直しがされたことに伴い所得金額調整控除が創設されました。

 所得金額調整控除には、①子供・特別障害者を有する場合②給与所得と年金所得を有する場合の2つがあります。

 ①子供・特別障害者を有する場合
 令和2年以降において給与収入が850万円を超える場合の給与所得控除の上限が設けられたことを背景に、給与収入が850万円超であっても、23歳未満の子や特別障害者を扶養する場合の経済的負担を軽減するために、所得金額調整控除が創設されました。

 ②給与所得と年金所得を有する場合
 令和2年以降、給与所得控除と公的年金等控除及び基礎控除の見直しが行われ、給与所得控除及び公的年金等控除が10万円引き下げられるとともに、基礎控除額が10万円引き上げられました。そのため、給与所得と公的年金所得の両方を有する場合には、10万円の所得が増えることによる税負担を生じさせないために、所得金額調整控除の適用を受けることとなりました。

 なお、①②のいずれにも該当する場合には、両方の所得金額調整控除の適用を受けることとなります。

子供・特別障害者を有する場合の所得金額調整控除

要 件
①給与収入が850万円を超えていること。
②次のイ~ハのいずれかに該当すること。
 イ.本人が特別障害者に該当する者
 ロ.年齢23歳未満の扶養親族を有する者
 ハ.特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者
  ㊟イ及びハの扶養親族および同一生計配偶者は、合計所得金額が48万円以下の人に限られます。

 

 要件に該当した場合には、年末調整にて所得金額調整控除申告書に必要事項を記載のうえ、申告する必要があります。

 なお、この所得金額調整控除は、扶養控除と異なり、同一生計内のいずれか一方のみの所得者に適用するという制限がありません。したがって、例えば、夫婦ともに給与等の収入金額が850万円を超えており、夫婦の間に1人の年齢23歳未満の扶養親族である子がいるような場合には、その夫婦双方が、この控除の適用を受けることができます。➡国税庁No.1411 所得金額調整控除

 つまり、扶養控除を受けているのは旦那さんであっても、要件を満たせば、所得金額調整控除は旦那さんも奥さんも適用を受けられることとなります。
 所得金額調整控除の適用を受ける場合には、「所得金額調整控除申告書」に記載して提出する必要があります。
 そのため、例え「扶養控除申告書」に23歳未満の扶養親族の記載等があったとしても、「所得金額調整控除申告書」に記載がされていなければ、年末調整にて所得金額調整控除の適用がされないこととなりますので、申告漏れがないように注意する必要があります。

注意点!
・扶養控除は、同一生計内のいずれか一方のみ
・所得金額調整控除は、要件を満たせば扶養している夫婦双方の適用が可
・所得金額調整控除申告書に記載して、給与支払者に提出!

給与収入が850万円超であるかの判定

二か所以上で給与収入がある場合

 二か所以上から給与収入がある方が給与収入が850万円を超えているかどうかの判断について、すべての給与を合計して判断するのかどうか迷うことかと思います。
 二か所以上から給与収入がある場合には、主たる給与支払者に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、主たる給与支払者において年末調整を受けることとなりますので、その主たる給与支払者から受ける給与収入のみで850万円を超えるかどうかの判断を行います。
 なお、二か所以上から給与を受けている場合は、確定申告が必要ですので、主たる会社での給与収入が850万円以下であったとしても、確定申告をすることにより、所得金額調整控除の適用を受けることとなります。

給与収入が850万円を超えるかどうか不明な場合

 年末調整の申告書を提出するまでに、本年の給与収入が850万円を超えるかどうか不明な場合は、所得金額調整控除申告書に、適用を受けるための記載をして提出する必要があります。例え、所得金額調整控除申告書に記載があったとしても850万円を越えなかった場合は、調整控除を受けることはありませんが、850万円を超えていても、所得金額調整控除申告書に記載されていなければ、調整控除を受けることは出来ないこととなります。

年末調整で所得金額調整控除申告書を提出(記載)しなかったために、適用を受けられなかった場合

確定申告をすることにより、所得金額調整控除を受けることとなります。


年末調整の記載~所得金額調整控除

「令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」 の一番下の欄に記載します。

国税庁[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告
国税庁令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書・給与所得者の配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書の記載例

①の箇所には、該当する要件欄にチェックを入れます。

②の箇所には、要件の対象となる扶養親族等の記載をします。対象となる扶養親族等が複数人いる場合には、1名のみの記載で差し支えありません。

③本人・配偶者・扶養親族が特別障害者であるために、所得金額調整控除の適用を受ける場合に、障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(障害の等級など)、特別障害者であることの事実を記載します。
扶養控除申告書に特別障害者である事実が記載されている場合には「扶養控除申告書に記載のとおり」と省略しても差し支えありません。


年末調整を受ける本人が特別障害者である場合

①の一番上の□に✔を入れます。
②に記載する必要はありません。
③の箇所に特別障害者に該当する事実として、障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(障害の等級など)を記載します。
扶養控除申告書に特別障害者である事実が記載されている場合には「扶養控除申告書に記載のとおり」と省略しても差し支えありません。

同一生計配偶者が特別障害者である場合

①の上から二番目の□に✔を入れます。
②に配偶者の氏名・個人番号・生年月日・続柄・配偶者の所得を記載します。
③の箇所に特別障害者に該当する事実として、障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(障害の等級など)を記載します。
扶養控除申告書に特別障害者である事実が記載されている場合には「扶養控除申告書に記載のとおり」と省略しても差し支えありません。

扶養親族が特別障害者である場合

①の上から三番目の□に✔を入れます。
②に特別障害者である扶養親族の氏名・個人番号・生年月日・続柄・特別障害者である扶養親族の所得を記載します。
③の箇所に特別障害者に該当する事実として、障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(障害の等級など)を記載します。
扶養控除申告書に特別障害者である事実が記載されている場合には「扶養控除申告書に記載のとおり」と省略しても差し支えありません。

年齢が23歳未満の扶養親族がいる場合

①の一番下の□に✔を入れます。
②に23歳未満である扶養親族の氏名・個人番号・生年月日・続柄・配偶者の所得を記載します。23歳未満の扶養親族が複数人いる場合であっても、人数によって控除される金額が変わる訳ではないので、1名のみ記載することで差し支えありません。
③に記載する必要はありません。

(参考)所得金額調整控除額(子供・特別障害者を有する場合)の計算

 所得金額調整控除の金額は、給与収入のみである場合には、給与収入の金額をもとに計算されます。そのため、要件の対象となる23歳未満の扶養親族が複数人いる場合や扶養する特別障害者が複数人いる場合であっても、計算に影響を及ぼしません。

 {給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%=控除額※

※ 1円未満の端数があるときは、その端数を切り上げます。

給与収入が1,000万円の場合であれば、15万円が給与所得から控除されます。 
    (1,000万円-850万円)×10%=15万円(控除額)

給与収入の他に年金収入がある場合

給与収入が850万円以下であっても、年金収入がある場合には、確定申告を行うことで給与所得と年金所得がある場合の所得金額調整控除の適用が受けられます。

参考:国税庁 

👇所得金額調整控除に関するFQA(源泉徴収関係)    

㊟個別の税務判断は、税の専門家に相談されることをオススメいたします。

※アフェリエイトを利用しています。

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