所得税~個人にかかる税金 改正税法

【令和2年税制改正】で、未婚のひとり親の所得控除が新設!ただし適用されない場合あり。

 令和2年度税制改正が2020年3月27日に国会で可決・成立しました。
なお、施行日は令和2年4月1日となっています。
これまで要検討とされていた、未婚のひとり親に対する控除が、今回の改正で創設されました。
この改正に伴い、これまでの寡婦(寡夫)控除についても改正が入っています。

これまで未婚のひとり親には、税制優遇制度がなかった

 婚姻歴があり離婚又は死別等の事由により、ひとり親となっている場合には、「寡婦(又は寡夫)控除」の適用がありましたが、婚姻歴のない”ひとり親”については、これまで税制上の優遇制度がありませんでした。

ひとり親税制の内容とは

 ひとり親税制の適用を受けるためには、下記の要件に該当する必要があります。

①生計を一にする子を有すること
 (この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。)
②本人の合計所得金額が500万円以下であること
 (合計所得金額500万円以下とは、給与収入であれば年収678万円以下です)
③本人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと
 (住民票の続柄に「夫(見届)」「妻(見届)」の記載がないこと)

 上記の要件に該当すると、所得控除35万円が受けられます。
 なお、個人住民税については、30万円の控除となります。

 改正により、婚姻歴の有無及び性別にかかわらず、子を持つすべての親に対して、公正な取り扱いがされることとなりました。

寡婦控除及び寡夫控除の改正

婚姻歴の有無にかかわらず、子を持つひとり親については、ひとり親控除35万円の適用が受けられることとなりました。そして、今後の寡婦(寡夫)控除の適用は、どのように改正されたのでしょうか。

子以外の扶養親族がいる寡婦控除の改正

過去に婚姻歴があり、ひとり親に該当しない女性で子以外の扶養親族がいる場合についての寡婦控除は、①合計所得金額500万円以下であることと、②事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと、が要件として追加されました。

寡夫の場合の控除額の引き上げ

 婚姻歴のあるひとり親である男性(寡夫)で合計所得金額が500万円以下である場合の寡夫控除額は、これまでの27万円でしたが、今後はひとり親控除として35万円の控除が受けられます。
 なお、こちらにおいても、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと、が要件として追加されています。

子無し、扶養親族無しで、死別による場合の寡婦控除の追加要件

死別による婚姻歴のある女性で、子も子以外の扶養親族もいない場合において合計所得金額が500万円以下である場合は、これまで同様に寡婦控除の適用が受けられます。この場合の寡婦控除の額は、27万円となります。
 ただし、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないことが要件として追加されています。

財務省HPの税制改正のパンフレットに、分かり易く表にまとめられて記載されています。

財務省HP 令和2年度税制改正パンフレットより            

ひとり親控除の適用がされない場合

 ひとり親であっても、内縁関係(事実婚)のある相手がいる場合には、ひとり親税制の適用が受けられないこととされました。

 これまでの寡婦(寡夫)控除に控除おいては、内縁関係(事実婚)の有無については要件とはされていなかったのですが、ひとり親税制の創設に伴い、これまで適用されていた寡婦(寡夫)の方においても、内縁関係(事実婚)の相手がいる場合には、寡婦(寡夫)控除は適用できなくなりました。

適用除外とされる内縁関係(事実婚)とは

 同じ住所に住んでいるだけであれば、「同居」「同棲」となり、住民票の世帯も別世帯となっていると思われます。
 ただし、婚姻届は出さずに、「妻(見届)」「夫(見届)」として、世帯合併の届け出をすると、事実婚とされ、ひとり親税制の適用除外になるものと考えられます。
 婚姻届を出していない内縁関係にある2人が、世帯合併をする目的としては、事実婚であることの証明や、社会保険の扶養が可能になることがあげられます。

適用時期

ひとり親控除の適用については、所得税(国税)については、令和2年分以後において適用されます。個人住民税(地方税)については、令和3年分以後となっています。

参考

国税庁:源泉所得税の改正のあらまし 令和2年4月

財務省:令和2年度 税制改正 パンフレット

㊟個別の税務判断については、税の専門家に相談されることを、おススメします。

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