マイナンバーカードを使ってe-taxで確定申告をする人が年々増加しています。確定申告作業でマイナンバーカードの利便性を実感されている方も多いのではないでしょうか。しかし、マイナンバーカードの作成は現時点では任意とされています。ただ今後、健康保険証とマイナンバーカードが一体化され、現行の紙またはカード型の健康保険証が廃止されることが予定されており、日本では国民皆保険制度をとっているため、実質的にはマイナンバーカード作成が義務化に向かっているとも言える状況です。そして更に、マイナンバーカードと運転免許証の一体化についても発表されました。
本記事では、マイナンバーカードと健康保険証・運転免許証が一体化する制度の概要や、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
マイナンバーカードと健康保険証の一体化制度概要
制度の仕組み
マイナンバーカードを健康保険証として利用することで、病院の窓口でマイナンバーカードを提示するだけで、保険適用の確認がスムーズに行われます。お薬情報や健診結果の提供に同意しておくことで、よりよい医療を受けることが出来ます。
導入のタイミング
この制度は2021年に開始され、従来の紙やカード型の健康保険証の発行は2024年12月2日より終了し、この時点で有効な健康保険証は最大1年間有効とされています。一体化により、健康保険の手続きがデジタル化され、行政サービス全般の効率化も目指されています。
マイナ保健証(マイナンバーカードに紐づけされた健康保険証)をお持ちでない方には、加入する医療保険者から「資格確認書」が送付される予定となっており、しばらくは、この資格確認書が健康保険証の役割を果たすようです。
健康保険証と一体化するメリット
メリット1: 持ち運びの簡便さ
マイナンバーカード一枚で、身分証明や医療関連手続きができるため、保険証を別に持ち歩く必要がなくなります。これにより、紛失やカード忘れの心配が軽減されます。
メリット2: 行政サービスのデジタル化
マイナンバーカードによって、医療データや保険情報が一元管理され、オンライン診療や健康データの追跡が容易になります。これにより、よりよい医療が受けられ、手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除されるなど、手続きの手間がなくなります。
メリット3: 医療費や保険適用の確認の簡略化
カード一枚で保険適用の確認ができるため、医療機関での支払い手続きがスムーズになります。また、自己負担割合や医療費控除の情報もデジタルで管理されるため、確定申告時の手続きが簡略化されます。
健康保険証と一体化するデメリット
デメリット1: 個人情報漏洩のリスク
マイナンバーカードには健康保険情報や個人情報が集約されるため、万が一、情報漏洩が発生した場合、その影響は大きくなります。サイバーセキュリティ対策が重要となると考えられます。
デメリット2: 利用可能な医療機関の限定
導入当初は、一部の医療機関で対応していない可能性があります。全国の医療機関が完全に対応するには、時間がかかる場合もあるため、普及状況を確認する必要があります。
デメリット3: カード紛失のリスク
マイナンバーカードを紛失した場合、健康保険証機能も同時に失われるため、速やかな再発行手続きが求められます。これにより、医療機関での一時的な不便が生じる可能性があります。
マイナンバーカードと運転免許証の一体化制度概要
制度の仕組み
運転免許証もマイナンバーカードと一体化されることが発表されました。これにより、運転免許の更新手続きや情報の管理がデジタル化され、一体化の手続きをすると免許証の情報もマイナンバーカードに集約されます。
運転免許証については、現行の免許証も残るため、①現行の免許証のみ保有②マイナ免許証のみ保有③現行の免許証とマイナ免許証の両方を保有のいずれかの選択が可能となっています。
導入の時期
運転免許証の一体化は、2025年3月24日から開始される予定です。これは、免許証のデジタル化や、免許更新手続きのオンライン化を進めるための法改正に伴うものです。
運転免許証と一体化するメリット
メリット1: 更新手続きの簡略化
運転免許証の更新のための講習ががオンラインで受講可能になります。視力検査や写真撮影、免許情報の更新は従来通り運転免許センター等で行う必要がありますが、事前に自宅でオンライン講習を受けておくことで、免許更新の時間の節約が可能です。
メリット2: 複数の証明書の統合
運転免許証、健康保険証、そしてマイナンバーカードが一体化されることで、持ち運ぶ証明書の数が減り、財布の中もスッキリします。これにより、必要な時にすぐに証明書を提示できる利便性が向上します。
メリット3: 本人確認手続きの一元化
一枚のカードで多くの場面での身分証明ができるため、本人確認の際の手間が省けます。例えば、レンタカーの利用や、住所変更等さまざまな行政手続きでも、マイナンバーカード一枚で完結します。
メリット4: マイナ免許証のみの場合は、運転免許証の手数料が安くなる
運転免許証については①現行の免許証のみ保有②マイナ免許証のみ保有③現行の免許証とマイナ免許証の両方を保有の選択が可能となっており、マイナ免許証のみの方は運転免許証の手数料が安く設定される予定です。
運転免許証と一体化するデメリット
デメリット1: セキュリティとプライバシーの懸念
運転免許証とマイナンバーカードが一体化されることで、重要な個人情報が集約されます。このため、セキュリティ面での懸念が強まります。個人情報が漏洩した場合の被害が大きくなる可能性があるため、十分な対策が必要です。
デメリット2: 運転免許証の更新時に新たな手続きの可能性
運転免許証の更新時にマイナンバーカードとの連携が必要になることで、新たな手続きや対応が求められる可能性があります。特にデジタルに不慣れな方にとっては、更新手続きがかえって煩雑になる可能性もあります。
デメリット3: デジタル格差の問題
高齢者やITリテラシーが低い人々にとって、デジタル化に対応するのが難しい場合があります。こうした方々に対するサポート体制が不十分だと、利便性がかえって失われるリスクもあります。
デメリット4: マイナ免許証のみでは、免許の有効期限の確認が面倒
マイナ免許証の場合、免許情報はICチップにデータとして格納されているため、更新時期を確認するためには、専用アプリでデータを読み取って確認することになります。マイナンバーカードに記載されている有効期限と、運転免許証の更新時期は異なり、それぞれ更新する必要があります。
デメリット5: 海外での運転の問題
海外出張や旅行で、レンタカーを借りて運転する場合、国によっては日本の運転免許証のまま運転できるところもありますが、マイナ免許証では、利用出来ないことが予想されるため、現行の免許証を持っておくか国際免許証を持つ必要がありそうです。
まとめ
マイナンバーカードと健康保険証・運転免許証の一体化は、利便性向上やデジタル化による効率化が大きなメリットです。しかし、一方で個人情報保護やシステム対応の遅れなど、解決すべき課題も存在します。マイナンバーカードの作成や活用においては、利便性とセキュリティを両立するための注意が必要です。
マイナンバーカードと健康保険証の一体化については、現行の健康保険証が廃止されることを考えると、紐づけはやむを得ないと思いますが、運転免許証の一体化については、今後の動向を見ながら検討していった方がよさそうです