大切な方を亡くされた後、残された遺族の方々は深い悲しみの中にいらっしゃることと思います。そのような中でも、亡くなった方の所得税の申告、いわゆる「準確定申告」を行う必要があります。この申告は、通常の確定申告とは異なり、相続人や遺族の方が代わりに行うことが特徴です。今回は、準確定申告のポイントについて詳しく解説し、申告手続きをスムーズに進めるための手順や注意点についてお伝えします。

1. 準確定申告とは?
準確定申告とは、1月1日から亡くなった日までの所得に対して行う所得税の申告です。通常の確定申告と異なる点は、相続人や遺族が亡くなった方の代わりに申告を行うという点です。
2. 準確定申告が必要なケース
具体的に、以下のような収入があった場合、準確定申告が必要になります。
- 給与収入: 死亡するまでの給与や退職金
- 不動産収入: アパートや駐車場の賃貸収入
- 事業所得: 個人事業による収入
- 配当所得: 株式投資による配当金(特定口座で取得した株式についての配当は、申告不要を選択することも出来ます。またNISA口座で取得した株式についての配当は申告不要です。)
3. 準確定申告の手続きの流れ
準確定申告は、以下の流れで行います。
ステップ1. 死亡の確認と相続人の決定
まずは、死亡証明書や戸籍謄本を取得し、誰が相続人になるのかを確認します。
ステップ2. 所得の把握
亡くなった方がどのような収入を得ていたのかを、以下の資料を参考に確認します。
- 源泉徴収票(お勤めされていた方であれば、給与所得者の源泉徴収票を確認します。年金受給者であれば、公的年金等の源泉徴収票を確認します。)
- 賃貸契約書、収入明細(賃貸用不動産の所有がある場合に確認します。)
- 医療費の領収書(医療費控除の申告が可能かどうかの確認をします。)
- 預貯金の通帳 など(入金されたものが、どういったものがあるか内容を確認します。)
- 過去の確定申告の提出歴の有無(提出があればどういった内容となっているかの確認をします。)
これらをもとに亡くなった方の所得を把握することが出来ます。
ステップ3. 申告書の作成と提出
必要な書類が揃ったら、申告書を作成し、税務署へ提出します。申告書のフォーマットは、税務署や国税庁のウェブサイトから入手できます。
準確定申告は、通常の確定申告書の様式の他に、付表を添付する必要があります。この付表の提出は、国税庁の確定申告作成コーナーでの作成及び電子送信は出来ないため、郵送または持参して提出する必要があります。

作成した申告書の提出先は、亡くなった方が生前に住んでいた住所地を管轄する税務署です。期限内に提出することで、延滞税や加算税を避けることができます。
No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
ステップ4. 税金の納付
申告の結果、納税が必要になった場合は、指定された期日までに税金を納めます。
4. 準確定申告の提出期限
準確定申告の提出期限は、亡くなったことを知った日から4ヶ月以内です。たとえば、亡くなったのが3月15日であれば、申告期限は7月15日となります。もし期限を過ぎてしまった場合、延滞税や加算税が課せられる可能性がありますので、注意が必要です。
また、e-Taxによる申告はできませんので、注意が必要です。
5. 令和6年度分の準確定申告と定額減税
令和6年分の所得につき、令和6年6月1日以後に準確定申告を提出する場合には、定額減税の適用を受けることが出来ます。なお、令和6年分の所得につき、令和6年5月31日以前に提出している場合には、定額減税の適用がされていないこととなるため、この場合には、5年以内(R6.6.1~R11.5.31)までに更正の請求を行うことにより、定額減税の適用を受けることが出来ることとされています。
※定額減税の対象者
令和6年の所得税の納税者である居住者
令和6年の所得税にかかる合計所得金額が1805万円以下である者
6. 覚えておきたいポイント
5.1 不動産収入の按分方法
アパートなどの不動産収入がある場合、亡くなった方の所得をどう申告するかがポイントです。以下の3つの期間に分けて所得を計算し、それぞれ適切な申告を行う必要があります。
- 亡くなるまでの所得: 亡くなった方が亡くなるまでの期間に得た収入は、亡くなった方自身の所得として申告されます。
- 亡くなった後から遺産分割が確定するまでの所得: 遺産分割が確定するまでの間、亡くなった方の所得は各相続人が法定相続分に応じて按分します。
- 遺産分割後の所得: 遺産分割が確定した後は、相続した方がその資産から得た所得を申告します。
5.2 医療費控除
亡くなった方が生前に支払った医療費がある場合、医療費控除を受けることができます。医療費控除を受けるためには、医療費の領収書などを保管しておくことが重要です。
亡くなった方の準確定申告で医療費控除を受ける場合の控除の対象となるのは、亡くなる日までに支払った医療費のみとなっています。
5.3 還付金の取り扱い
準確定申告の結果、還付金が発生する場合、その還付金は相続財産の一部となります。実務上は、相続人の代表者が還付金を一括して受領することが一般的ですが、相続人間での調整も必要です。相続人同士で話し合い、適切に分配する必要があります。
6. 専門家への相談
準確定申告は、亡くなった方の所得税申告をスムーズに行うための重要な手続きです。所得の把握、申告書の作成、提出期限の遵守、必要書類の準備など、多くの注意点があります。特に医療費控除や還付金の取り扱いについても、正確に理解しておくことが大切です。税務上のトラブルを避けるためにも、専門家への相談を検討することをお勧めします。人生の最後の手続きとして、準確定申告を丁寧に行うことで、亡くなった方の思いを大切にすることができるでしょう。
まとめ
この記事では、準確定申告の概要、手続きの流れ、注意点などを解説しました。大切な方の最後の税務手続きである準確定申告。この記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。
※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、具体的な税務アドバイスではありません。個別のケースについては、税理士等の専門家にご相談ください。