年末が近づくと、給与所得者にとって重要な手続きの一つが「年末調整」です。正しく手続きを行うことで、税金の還付や余計な支払いを防ぐことができますが、慣れないとミスをしやすい作業でもあります。今回は、年末調整でよくある5つの間違いと、その対策について解説します。
1. 扶養控除申告書の記入ミス
よくあるミス
扶養家族の情報を誤って記入したり、扶養控除を受けられる条件を誤解している場合があります。特に、扶養親族の収入が控除の対象外であるのに記入してしまうミスが多いです。
対策
扶養親族の年収や生活の実態を確認し、該当する家族のみを正確に記入することが大切です。申告書には記載例があるため、それを参考にしながら丁寧に書き進めましょう。
2. 生命保険料控除の申告漏れ
よくあるミス
生命保険料控除の証明書を提出し忘れたり、古い証明書を使用してしまうことがあります。また、契約内容が変わったことを見逃し、古いデータを使って申告するケースも。
対策
保険会社からの最新の控除証明書を必ず確認し、正確な金額を記入することが重要です。年末までに証明書を受け取れるかも確認し、もし届かない場合は保険会社に問い合わせてください。
3. 配偶者控除・配偶者特別控除の誤解
よくあるミス
配偶者の年収状況を正確に把握せずに申告し、控除を誤って適用するケースが見られます。特に、配偶者特別控除の計算に混乱が生じやすいです。
対策
配偶者の年収を事前に正確に確認し、控除の対象範囲を再確認しましょう。配偶者特別控除の適用条件や金額も事前に把握しておくとスムーズです。
4. 小規模企業共済等掛金控除の見落とし
よくあるミス
小規模企業共済や確定拠出年金などの掛金控除を申告していない、または間違った金額を記入してしまうケースです。
対策
掛金の支払い明細を正確に確認し、証明書を漏れなく提出することが重要です。また、どの掛金が控除の対象になるかを再確認して、適切に申告しましょう。
5. 医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税)の誤解
よくあるミス
医療費控除やふるさと納税などの寄附金控除を年末調整で申告できると誤解してしまうことがあります。これらは年末調整では手続きできませんので、還付を受けたい場合には確定申告が必要です。
対策
医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた場合に確定申告で行う必要があります。年末調整で申告できないため、控除対象の医療費を事前に整理したうえで、還付を受けたい場合には確定申告が必要です。
また、ふるさと納税による寄附金控除も年末調整では行えません。ただし、寄付先が5ヶ所以下で、副業がない、または医療費控除を受けないなど、確定申告をする予定がない方は、「ワンストップ特例制度」を利用できます。この制度では、寄付先の自治体にワンストップ特例申請書を提出するだけで、確定申告をする必要がなく、ふるさと納税の控除が自動的に反映されます。ワンストップ特例制度を利用するためには、寄付した翌年の1月10日までに申請書を提出する必要があるため、忘れずに対応しましょう。
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6.複数の事業所で勤務している方の年末調整の誤解
よくあるミス:「年末調整を複数の勤務先で行おうとしてしまう」
副業などで2箇所以上の事業所で働いている場合、「すべての勤務先で年末調整ができる」と勘違いすることがあります。しかし、年末調整はメインの勤務先(主たる給与を受け取っている事業所)でのみ行われるものです。副業先では年末調整は行われず、年末調整用の「扶養控除等申告書」はメインの勤務先にのみ提出する必要があります。
副業先では、「乙欄」に基づき源泉徴収が行われ、通常より高い税率で控除されます。これは、副業がある場合は確定申告を通じて税金を精算する必要があるためであり、申告をしないことでの不公平を防ぐための措置です。
対策:正しい年末調整の理解と確定申告の実施
副業をしている方が正しい税額を確定させるためには、以下のポイントに気をつけましょう:
• 年末調整の申告書はメインの勤務先にのみ提出:副業先には提出せず、メインの勤務先でのみ年末調整を行います。
• 確定申告を行う:副業先での所得と控除された税額を調整し、正しい税額を確定するためには確定申告が必要です。確定申告を行うことで、複数の勤務先での収入が合算され、還付が発生する場合には適切な還付が受けられます。
なお、副業先の給与担当者もこの点を理解していない場合があり、注意が必要です。就労者と給与担当者の双方が正しい手続きを把握し、確定申告の適切な実施に努めることが大切です。
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まとめ
年末調整は、毎年行う重要な手続きですが、慣れないとミスが起こりやすいものです。扶養控除や保険料控除、配偶者控除のミスはよくありますが、適切な準備と確認を行えば防ぐことができます。特に、医療費控除やふるさと納税の寄附金控除は確定申告が必要である点を理解し、ワンストップ特例制度を活用できるかどうかも確認しておくと良いでしょう。早めに準備を始めて、年末調整をスムーズに進めてください。