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従業員による横領が発覚したら。税務処理と横領リスク回避のための5つの防止策

経営者にとって、従業員による横領はあってはならない問題の一つです。多くの人にとって、横領はニュースやドラマでしか目にしないものかもしれませんが、税理士業務を通じて企業の内部事情に触れていると、実際に横領事件が発生するリスクがあることを感じる場面も少なくありません。

本記事では、万が一横領が発覚した場合の税務処理について解説し、横領の発生を未然に防ぐために経営者が取るべき対策についても紹介します。

横領が発覚した場合の会計処理

1. 横領が発覚した時の仕訳

横領が発覚した時点で、まずその損失を計上する仕訳が必要です。この際、損失を「横領損失」または「雑損失」として計上します。具体的な仕訳は次の通りです。

仕訳①:横領損失 xxx / 現金預金 xxx

ここで「xxx」は横領された金額です。

2. 横領金額の返還請求の仕訳

損害の発生が発覚した場合には、同時に横領した従業員に対する損害賠償請求権を計上します。

仕訳②:損害賠償請求権 xxx / 雑収入 xxx

こうすることで、損失と益の両建てがされる形になります。損失計上時期と損害賠償請求権の益金算入時期については、最高裁昭和43年10月17日判決において、原則として同時に計上する「同時両建説」によるものとすると判決されています。しかし現在、状況等にもより判断することとなりますが、学説上は同時両建説と異時両建説とで見解が分かれているようです。

国税庁:不法行為に係る損害賠償金等の帰属の時期-法人の役員等による横領等を中心に-

3. 回収不能が確定した場合の仕訳

損害賠償請求権を立てたものの、回収が見込めないと確定した事業年度には、その額を貸倒損失として計上します。

仕訳③:貸倒損失 xxx / 損害賠償請求権 xxx

横領を防ぐための具体的な対策

横領は経営者にとって避けたい事態ですが、未然に防ぐための対策を講じることでそのリスクを減らすことができます。以下に、横領防止のための実践的な対策を紹介します。

1. 現金や預金の定期的なチェック

現金商売を行っている場合は、事務所や店舗内の現金残高が帳簿上の残高と一致しているか、日常的に確認しましょう。これにより従業員への抑止力にもなりますし、仮に不正があった場合でも早期に発見することができます。

2. 通帳の動きの監視

定期的に通帳を確認し、不明な振込や、特定の取引先に対する過度な支払いがないかをチェックします。不審な動きがある場合、詳細を確認することが重要です。

3. 売掛金の現金回収を避ける

売掛金は振込での回収に統一し、現金での回収を避けることで、不正を防止する環境を作ることができます。

4. 従業員への貸付の際は給与天引きでの回収

従業員に対する貸付を行う際は、返済を給与天引きにすることで、回収漏れを防ぎます。

5. 透明で厳正な環境づくり

経営者として、従業員が不正に手を染めないような環境を作ることも大切です。例えば、経理業務の分担や監視体制の強化、信頼関係の構築などが有効です。

まとめ

従業員による横領は、経営者にとって避けたい最悪の事態の一つです。万が一発生してしまった場合の適切な会計処理と、日頃からの防止対策が、企業の安全と健全な経営のためには不可欠です。横領のリスクを意識し、早めの対策を講じておくことで、予期せぬ事態から会社を守りましょう。

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