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【令和3年改正】土地の譲渡があった場合、課税売上割合に準ずる割合を使って節税

非課税取引の土地の譲渡による消費税の影響

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 企業が継続して事業を続けていくには、資金繰りの把握は重要となっています。昨今の状況下で、売上が思うように得られず、また、今後変化していくかもしれない働き方や企業の在り方を考えた際、保有している遊休土地の売却を考える経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。

 土地を譲渡した際の消費税の計算について,課税売上割合の準ずる割合の適用による節税の検討があげられますが、これはどのようなものでしょうか。令和3年度の改正も含めて見ていきます。

課税売上割合の違いによる納税額への影響

 土地の譲渡取引は”非課税取引”となることから、土地を譲渡した場合は、消費税の計算における課税売上割合が小さくなります。課税売上割合とは、簡単に言うと、消費税の納税額を算出する際に、仕入に係る消費税に乗じる割合のため、課税売上割合が小さくなるということは、売上に係る消費税から差し引く金額が小さくなり、納付することとなる消費税額が増えることを意味します。

 
  消費税の納税額 = 売上に係る消費税 ー 仕入に係る消費税 × 課税売上割合

 


仮に課税売上割合が100%の場合と60%の場合と比較して消費税の納税額の計算をしてみます。
 前提:売上に係る消費税20,000、仕入に係る消費税(全額共通対応とする)10,000 

課税売上割合100%の場合:20,000-10,000×100%=10,000(納税額10,000)

課税売上割合60%の場合:20.000-10,000×60%=14,000(納税額14,000)

売上に係る消費税と仕入に係る消費税が同額である場合、課税売上割合が小さい方が、消費税の納税額が増えることが分かります。

非課税売上の増加による課税売上割合への影響

        

  課税売上と免税売上の合計が毎期2000万円ほどで、非課税売上は預金利子数百円程度だったとすると、課税売上割合は99.9%となります。(2000万円÷(2000万円+数百円)×100%≒99.9%)

 しかし、たまたま土地の譲渡があったとしたら、土地の売却代金は大きいため課税売上割合に影響します。
 仮に、課税売上と免税売上の合計が変わらず、土地の売却代金が1000万円と仮定すると、課税売上割合は66.66%となります。 (2000万円÷(2000万円+1000万円)×100%≒66.66%)

 仕入税額控除額を計算するためには、仕入に係る消費税に課税売上割合を掛けることとなるため、土地の譲渡がなければ99.9%控除出来たものが、土地の譲渡があったために66.66%の控除となり、消費税の納税額の計算においては、売上に係る消費税から控除することととなる仕入税額控除が少なくなるため、結果的に、消費税の納税額が増えることとなります。

課税売上割合の準ずる割合の適用で節税

 不動産業など、継続的に土地の譲渡を行っている業者であれば、課税売上割合が小さいのはやむを得ないのですが、一般の事業者においては、土地の譲渡は、滅多に行われるものではありません。たまたま土地の譲渡をして消費税の負担が増えてしまうのは事業実態を反映しているとは言えません。そのため、たまたま土地の譲渡があった場合の救済措置として、課税売上割合の準ずる割合の適用があります。

 課税売上割合が95%以上で全額控除をしている場合は、個別対応方式に該当しますが、一括比例配分方式により仕入税額控除の計算をしている場合は2年間、一括比例配分方式により計算しなければなりません。
 課税売上割合の準ずる割合の適用については、原則課税の個別対応方式の共通課税部分に適用することとなります。そのため、一括比例配分方式による計算においては、課税売上割合の準ずる割合の適用はできません。

 簡易課税制度を選択している場合は、売上金額に応じて仕入税額控除の計算をすることから土地の譲渡による消費税の計算には影響はありません。

 

 

 土地の譲渡があったため、課税売上割合が小さくなった場合には、「課税売上割合の準ずる割合」を適用すると、直近3年間の課税売上割合の平均もしくは直近の課税売上割合かのどちらか小さい方を使って消費税の計算をすることになります。

土地の譲渡があった年と直近3年間の課税売上割合を次のように仮定します。
 ×1年 89% 
 ×2年 87% }直近3年間の通算課税売上割合 89%
 ×3年 91%
 ×4年 65% →土地の譲渡により課税売上割合が減少 

 当期×4年の課税売上割合65%を使って消費税の納税額を計算すると、仕入税額控除額が小さくなるため、納税額が多くなってしまいます。そこで準ずる割合の検討です。
 直近3年間の課税売上割合の一番大きいもの(×3年91%)と一番小さいもの(×2年87%)の差は5%以内(91%-87%=4%≦5%)のため、準ずる割合の適用が出来そうです。

 直近3年間の通算課税売上割合89%と直近の課税売上割合(×3年)91%を比較して小さい方は、通算課税売上割合の89%なので、準ずる割合の適用する場合の課税売上割合は89%となります。

 この例によれば、準ずる割合を適用しなければ、本来の当期×4年の課税売上割合は65%であるため、準ずる割合の適用による89%を使って消費税の納税額を計算する方が、納税額が少なくなります。

課税売上割合の準ずる割合の適用方法

適用要件
1.その土地の譲渡がなければ、事業の実態に変動がないと認めらること。
2.適用を受けようとする課税期間の末日までに、税務署長に「消費税の課税売上割合の準ずる割合の適用承認申請書」を提出し、課税期間の末日の翌日から1月以内に税務署長の承認を受けること。

土地の譲渡がなかったとした場合に、事業の実態に変動がないと認められる場合とは、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内である場合です。

 

課税売上割合の準ずる割合の適用については、下記の①又は②のいずれかの課税売上割合のいずれか低い割合を適用します。
 
 ①当該土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合
 ②当該土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合

 

たまたま土地の譲渡があった場合の準ずる割合に関する改正事項

 改正前においては、課税売上割合の準ずる割合の適用について、適用を受けようとする課税期間の末日までに所轄税務署長に「消費税の課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書(以下「承認申請書」とする。)」を提出して、税務署長の承認を受ける必要がありました。

 しかし、課税期間末日ぎりぎりに土地の譲渡があった場合、課税期間の末日までに承認申請書を提出しても、課税期間の末日までに、税務署長の承認が受けられないというケースが生じていたようです。

 令和3年度改正において、課税期間の末日までに承認申請書を提出し、同日の翌日から1月以内に税務署長の承認を受けた場合には、承認申請書を提出した課税期間において、課税売上割合の準ずる割合の適用ができることとなりました。あくまで承認申請書は課税期間の末日までに提出することが必須のため、たまたま土地の譲渡があった場合には、承認申請書を提出することを忘れないようにしなければなりません。

不適用届出書の提出を忘れてしまうとアウト

 この適用は、たまたま土地の譲渡があった場合に認められるもののため、翌課税期間には、「課税売上割合の準ずる割合の不適用届出書」を提出しなければなりません。提出がなければ、税務署長の承認が取り消され、課税売上割合の準ずる割合の適用を受けられなくなります。

課税売上割合の準ずる割合を適用して計算した消費税の申告書の提出と同時に「課税売上割合の準ずる割合の不適用届出書」を提出しておくと安心です。

改正の適用時期

令和3年4月1日以後に終了する課税期間から適用されます。

参考:国税庁 👇

㊟個別の税務判断は、税の専門家に相談されることをオススメします。

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