24年ぶりに円相場は安値を付け、保有している外貨を円に両替している人が増えています。為替相場の変動によりもうけが出た場合は、確定申告はすべきなのかどうか疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
ケース1:保有する外国通貨を円に交換した場合
保有する外国通貨を円に交換した場合には、為替差損益を認識します。
円で購入時(1ドル=100円):100円/㌦×10,000㌦=100万円
ドルに交換時(1ドル=130円):130円/㌦×10,000㌦=130万円
為替差益:130万円-100万円=30万円 ∴30万円の為替差益
為替差益が生じた場合は、原則、確定申告が必要となります。
ケース2:保有する外国通貨を別の外国通貨に交換した場合
保有する外国通貨(例えば米ドル)を別の外国通貨(例えばユーロ)に交換した場合には、別の外国通貨(この場合はユーロ)への交換時に為替差損益を認識します。
円で購入時(1ドル=100円):100円/㌦×10,000㌦=100万円
米ドルでユーロ購入時(1ユーロ=150円):150円/€×8,000€=120万円
為替差益:120万円-100万円=20万円 ∴20万円の為替差益
為替差益が生じた場合は、原則、確定申告が必要となります。
ケース3:保有する外国通貨を、そのまま外国通貨で預金した場合
手許に外国通貨(例えば米ドル)を持っていて、外貨預金に米ドルを預け入れた場合、為替差損益を認識しません。
同様に、A銀行の外貨預金からB銀行の外貨預金へ、同一の通貨で預け入れ替えた時も、為替差損益は認識しません。
外国通貨を両替することなく、預金に預け入れたり、預入銀行を変更したりしているだけでは、その外国通貨を持ち続けているにすぎません。同一の通貨で預け入れや払い戻しをしているだけでは、金額に増減はないため、為替差損益を認識する必要はないとされています。
為替差損益を認識しておらず、確定申告の必要はありません。
為替差益が生じた場合の確定申告の有無
- 上記ケース1やケース2のように、為替差益が生じている場合には、確定申告が必要となります。
- 為替差益については、原則、雑所得として申告します。
ただし、給与が1か所のみで給与収入が2,000万円以下の給与所得者で、勤務先で年末調整を行っていて、為替差益を含む給与以外の所得が20万円以下であれば、原則、所得税の確定申告はしなくてもよいことになっています。
(所得税の確定申告はしない場合でも、住民税の申告は必要となっています。)
しかし、医療費控除を受ける場合や、住宅ローン控除を受ける場合などの還付申告を受けるためなど、確定申告をするときは、給与所得以外の所得が20万円以下であっても、その20万円以下の所得も併せて申告をする必要があります。
為替差損が生じた場合
為替差損が生じた場合には、確定申告をする必要はありません。
ただし、他に雑所得があれば、その為替差損の金額と相殺できます。
他の雑所得と為替差損を相殺し、為替差損が残った場合には、他の所得との損益通算は出来ません。また翌年に繰り越すことも出来ません。
まとめ
為替差益が生じた場合
為替差益が生じた場合には、原則として雑所得として確定申告をする必要があります。
ただし、年末調整済みの給与所得者で、給与以外の所得が20万円以下であれば、確定申告をしなくてもよいことになっています。そのため、給与収入以外の所得が20万円以下の為替差益のみであれば、確定申告の必要はありません。
給与所得以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告は必要となります。
確定申告をされる方
確定申告が必要な方や、医療費控除を受けたい方や、ふるさと納税が5か所以上で寄付金控除を受けたい方、住宅ローン控除の初年度の方など還付を受けるために確定申告をする方については、給与所得以外の所得が20万円以下であったとしても、その所得を除外することは出来ません。
為替差損が生じた場合
為替差損が生じた場合には、確定申告をする必要はありません。しかし、為替差損以外の雑所得(公的年金や個人年金等)がある場合は、他の雑所得と為替差損を相殺できるため、為替差損についても確定申告の計算に含めた方がいいということになります。