所得税~個人にかかる税金

【年末調整】2か所以上から給料をもらっている場合の年末調整の仕方

 昨今の働き方改革による副業解禁や、複数の法人を経営しているビジネスマンなど、2か所以上から、給料をもらっている方が増えているのではないでしょうか。
 
 2か所以上から給料をもらっている場合の年末調整は、どうなるのでしょうか。

 一言で2か所以上から給料をもらっているといっても、いくつかのケースがありますので、ケース別に見ていきます。

3つのケース

  • 転職をして2か所以上の勤務先から給料をもらっている。かつ、年末時点では1か所の職場で勤務している。
  • 転職をして2か所以上の勤務先から給料をもらっている。かつ、年末においては無職であり、年末調整を受けられない。
  • 本業の勤務先とは別に副業として別の勤務先で、かけもち勤務している。

所得税に対する税金の計算期間

 個人に対して課される税金の一つである所得税の計算期間は、1月1日から12月31日までの暦年課税とされ、1月1日から12月31日までに得た所得をすべて合計して納税額が算出されます。

2カ所以上から給料をもらっている場合の年末調整

一年の間に、複数の会社等にて勤務した場合の年末調整については、先に示した通り3ケースがありますので、ケース別の取扱いについて見ていきます。


1⃣.転職をして2か所以上の勤務先から給料をもらっている。かつ、年末時点では1か所の職場で勤務している場合

 例は上記図のとおりです。
 A社・B社の勤務を経て、年末時にはC社に勤務している状況です。

 この場合は、C社にて年末調整を行うことになります。勤務者は、年末調整の申告書を提出する際に、前職であるA社とB社からその年の年調整未済の源泉徴収票をもらってC社に提出します。
 
 C社は、この勤務者の年末調整の際には、A社とB社の給与収入・社会保険料等・源泉所得税を考慮して計算します。
 
 そのため、この勤務者が給与収入以外の収入がなく、医療費控除など確定申告をする必要がなければ、年末調整のみで年税額が確定します。

2⃣.転職をして2か所以上の勤務先から給料をもらっている。かつ、年末においては無職であり、年末調整を受けられない場合

 例は上記図のとおりです。
 A社を退職後、B社にて勤務していたが、年末を迎える前にB社を退職しているため、年末調整を受けれない状況です。

 
 この場合は、年末までに退職していることから、B社において年末調整を受けられません。そのため、A社とB社から年末調整未済の源泉徴収票を受け取り、翌年の2月1日から3月15日までの間に、納税地の所轄税務署にて、確定申告をする必要があります。

確定申告をしないと、どうなるのでしょう。

【所得税】
 A社とB社にて給料の支払い時に、源泉所得税を控除して給与支給がされています。
 
 この毎月の給与から徴収される源泉所得税は、給料の総額から社会保険料等を控除した金額をもとに税額表にて求められます。
 
  年末調整で申告する保険料控除等は、もちろん考慮されていません。多くの場合、年末調整にて還付されることが多いのは、毎月の給料から控除されている源泉所得税が概算で多く徴収されているためです。
 
  したがって年末調整を受けずに退職し、その後、再就職をしていない場合は、年税額が確定していない状況となっています。
 
 確定申告をすることにより、納め過ぎとなっている税額がある場合は、還付されることとなりますが、確定申告をしなければ、還付を受けることはありません。

【個人住民税】
 確定申告をしていないと、翌年に課される個人住民税も高くなる場合が考えられます。

 上記例の場合、A社とB社は、退職者に対する「年末調整未済の給与支払報告書」を、退職者の退職時の住所地のある市町村に提出します。そのため、市町村が把握している納税者に対する所得に関する情報は、納税者が確定申告をしていなければ、給与支払者(A社とB社)から提出された「給与支払報告書」のみとなっています。
 
 市町村は、この納税者の個人住民税の税額の算定を行うときは、給与支払者から提出された「給与支払報告書」もしくは確定申告書が提出された場合は「確定申告書」をもとに算出します。
 
 もし、確定申告をすべき納税者が確定申告をしていなければ、その納税者の情報は、給与支払者から提出された「給与支払報告書」しかなく、これをもとに納税額の算出を行うこととなります。
 
 つまり、年末調整がされていない退職者が、確定申告書の提出もしていなければ、扶養控除や保険料控除等が考慮されておらず、個人住民税が高く算出されてしまうのです。


3⃣.本業の勤務先とは別に副業として別の勤務先で、かけもち勤務している場合

 例は上記図のとおりです。
 A社で勤務していたが、副業として別の会社に就職し、年末においては、A社とB社にて勤務している状況です。

 この場合は、メインの勤務先であるA社にて年末調整を行うこととなります。ただし、A社で行う年末調整にはB社の給料等を含めて計算することは出来ません。
 そのため、年末調整済みのA社の源泉徴収票年末調整未済のB社の源泉徴収票にて、翌年の2月1日から3月15日までに、納税地の所轄税務署にて確定申告を行う必要があります。

扶養控除等申告書を提出できるのは1か所の勤務先のみ

 複数の会社等に勤務している場合、年末調整の計算が出来るのは、主たる勤務先のみとなり、扶養控除申告書を提出できるのは、メインの勤務先1か所だけです。

参考:扶養控除等申告書の提出の有無による徴収税額の違い

 扶養控除申告書を提出している勤務先が、給与を支払う際に徴収する源泉所得税は、「給与所得の源泉徴収税額表(以下「税額表」)」を使って求められます。

 この税額表は、”甲欄”、”乙欄”、”丙欄”があります。

 給料を月ごとに支払うものについては、「月額表」を使います。
 ”毎日・週ごと・日割り”及び”日雇賃金”として給料が支払われるときは、「日額表」を使います。

 給与支払者は、「扶養控除等申告書」を提出している人に対して支払う給与については”甲欄”を使って税額を求め、その他の人に対して支払う給与については”乙欄”を使い税額を求めます。そして、日雇賃金については”丙欄”を使い税額を求めます。

 ”甲欄”と”乙欄”を見比べても分かるとおり、”乙欄”の源泉徴収税額は、甲欄よりも多い税額となっています。
 
 複数の会社等から給与等の支払いを受けている人は、所得税の確定申告をする必要がありますが、もし毎月の徴収税額が少なく、確定申告をしなければ、国は税収を確保できなくなってしまいます。そのため、毎月の給与から、多めの税額を徴収しておいて、確定申告したら還付するというスタンスを取っているのです。

 

参考:国税庁

㊟個別の税務判断は、税の専門家である税理士に相談されることをオススメいたします。

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